インフルエンザワクチンの効果(2019年12月)

  • 2019.12.28 Saturday
  • 06:50

 インフルエンザワクチンの効果について検証しました。期間は2019年12月1日から12月28日までです。インフルエンザ症状を訴え来院し、迅速検査を受けられた方は158名でした。ワクチン接種の有無によりインフルエンザに罹患した方の数を以下に示します。

ワクチン未接種 ワクチン接種済
インフルエンザ陽性 61名 21名 82名
インフルエンザ陰性 42名 34名 76名
103名 55名 158名

 

Test negative法によりワクチンの効果を計算しましたところ、Vaccine effectiveness(VE)は57.5%%でした。

昨年の同時期と比べインフルエンザ陽性の方は3.4倍(今年82名/昨年24名)と大幅に増加しています。

 

ワクチンは昨年に比べはるかに高い効果を示していることが確認されました。(昨年のV.E.はマイナス33.8%)

V.E.が57.5%とは「ワクチンを接種せずにインフルエンザに罹った方100名が、仮にワクチンを接種していれば57.5%(57〜58人)が罹らずに済んだ」ということになります。

昨年と比べワクチンが高い効果を示したのは、今年度はワクチンが効きやすいタイプ(AH3pdm09)が流行しているためだと考えられます。(昨年度はワクチンが効きにくいA香港型が流行していました。)

 

 年末年始で人の動きが活発になったあと、年が明けて、仕事、学校が再開されるとインフルエンザは本格的な流行期に入ります。

今シーズンは大流行が予想されています。ワクチンを接種されなかった方は厳重に、接種された方も油断せず、手洗い、うがい、鼻うがいを行って予防してゆきましょう。

 

感染後過敏性腸症候群

  • 2019.12.21 Saturday
  • 18:24

 長期間にわたりお腹の症状(下痢、便秘、腹痛、腹部不快感など)が続く「過敏性腸症候群」という疾患があります。ストレスなどが原因で腸の運動異常、知覚異常が起こり、様々なお腹の症状を引き起こすと考えられています。

 

 「過敏性腸症候群」が急性胃腸炎後に発症する場合を「感染後過敏性腸症候群」と呼ばれます。感染前には「過敏性腸症候群」の症状がなかった方が、急性胃腸炎後に「過敏性腸症候群」を発症する状態と定義されています。

 

 当院でもこれまで「感染後過敏性腸症候群」に当てはまる方が22名おられました。男女比は5:17で女性に多く、平均年齢は33.7歳で、全体の68%が20、30歳台の方でした。「感染後過敏性腸症候群」を発症する危険因子は「若年」「女性」と論文で報告されていますが、それに合致する内容でした。急性胃腸炎の原因は「ウイルス性」が11名、「細菌性」が10名、「赤痢アメーバー」が1名でした。発症後に症状が持続する期間は、1か月未満が9名、1か月以上1年未満が8名、1年以上が5名おられました。自然に落ち着く場合と、長期化する場合があり、後者ではしかるべき治療が必要になります。症状として全員が「下痢、腹部膨満、腹部不快感」で悩まされていました。

 

 ウイルスや細菌が腸の粘膜に炎症を起こすことによって腸粘膜の免疫系が乱れ、それにより腸の運動異常、知覚異常が引き起こされることが原因と考えられています。症状が長期的に持続している方は通常の「下痢型過敏性腸症候群」と同じ治療を行いますが、難渋するケースも多いです。

 

 

インフルエンザが流行しています

  • 2019.12.05 Thursday
  • 20:28

 インフルエンザが流行しています。昨年11月1日から12月5日の約1か月でインフルエンザにかかられた方は0人でしたが、今年度はすでに36名(A型35名、B型1名)の方がインフルエンザにかかっておられます。8月31日のブログで予想していた通りの流行になりました。

 

 現時点ではA型のうちH1N1pdm09タイプが流行しているとの情報です。このタイプのインフルエンザにはワクチンが有効なため、今シーズンはワクチンの効果が高いと思われます。

 

 感染症学会が「抗インフルエンザ薬の使用について」のガイドラインを発表しました。タミフルは症状の重症化を抑え、発熱とウイルス排泄期間を短縮させ、致死率も低下させるとの評価です。ゾフルーザはB型に対しては他の薬剤より優れているが、それ以外はほぼ同等との評価です。逆に耐性ウイルスを作り出し、症状が長引く可能性が指摘されています。そのためゾフルーザの使用は積極的には推奨されなくなっています。当院でもタミフルあるいはイナビルの使用を原則にしています。

 

 

腹部症状と漢方ー桂枝加芍薬湯

  • 2019.10.18 Friday
  • 20:04

 「放屁」が多くて困っておられる9名の方のうち、7名の方が同時に「腹部膨満」の症状も訴えておられました。そして桂枝加芍薬湯で「放屁」の回数が減ると、同時に「腹部膨満」も改善しています。 「おならが出過ぎているのに、お腹がはる」、「おならの回数が減ったら、お腹のはりがとれた」ということになります。文章の前後が矛盾している感じがしませんか?

  

  ストレスがかかると腸を動かす筋肉は小刻みで不規則に収縮するようになります。あたかも「こむら返り」で足の筋肉が痙攣を起こしているかのような動きです。そのため1回の「放屁」で排出できるガスの量は少なくなります。また小刻みに動くため「放屁」の回数は増えてしまいす。その半面全体としてのガス排出量は十分ではなく、出し切れなかったガスがたまり「腹部膨満」となります。「おならが出過ぎているのに、おなかがはる」のはこのためです。

 

  桂枝加芍薬湯は腸の筋肉を弛めることにより、「不規則で小刻みな」動きを「規則的で緩やかな動き」にしてくれます。これによりガスをスムーズに送り出し、一定量のガスを貯めてから排出することができるようになるため「おならの回数が減って、お腹のはりがとれる」ようになるわけです。

 

 

 

腹部症状と漢方ー桂枝芍薬湯

  • 2019.10.17 Thursday
  • 14:19

  腹部の不快な症状に対して使用頻度の高い「桂枝加芍薬湯」の有効性について検討しました。

「桂枝加芍薬湯」は「腹部膨満を伴う、しぶり腹、腹痛」に有効な漢方薬と言われています。芍薬、甘草、桂皮、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)の5つの成分を含んでいます。

  この「桂枝加芍薬湯」で治療を行った50名の方(男性14名、女性36名)の方に対する効果を検証しました。有効35名(70%)、無効15名(30%)でした。これまでの論文と同程度の有効率でした。腹部膨満と有効率を調べてみました。

        症状 有効 無効
腹部膨満あり + しぶり腹/腹痛/下痢/放屁 15 23
腹部膨満なし + しぶり腹/腹痛/下痢/放屁 20 27
         計 35 15 50

「 腹部膨満あり」の方より「腹部膨満なし」の方のほうが有効率はやや高めでした。(65% vs 74%)

腹部膨満以外での症状では「しぶり腹」の方に対するで有効率が88%(7名/8名)と最も高く、 次いで

「腹痛」74%(23名/31名)、「下痢」66%(23名/35名)でした。効能のとおり、「腹痛」、「しぶり腹」に対する

有効性は高く、「下痢」に対する有効性はやや低い結果となっています。

また「放屁」が多くて困る方に対する有効性は56%(5名/9名)でした。

 

  「放屁」に対する桂枝加芍薬湯の有効性は一見あまり高くは見えませんが、「放屁」で困る方を「放屁のみ」の方と

「放屁+ゲップ」に分けると、「放屁のみ」では100%改善していました、反対に「放屁+ゲップ」の方は有効性0%でした。

「放屁のみ」の場合、腸の問題が主のため桂枝加芍薬湯が効果を発揮しますが、「ゲップ」を伴う場合には空気嚥下症の問題も絡んでくるため、桂枝芍薬湯のみでの対応が困難になっているのではないかと推測しています。

  

ストレス以外にも「不安感」などの感情が空気嚥下症の原因にもなることから、これに対する対応も必要ではないかと考えています。

 

 

 

 

オーストラリアのインフルエンザ(2019年度)

  • 2019.08.31 Saturday
  • 17:32

 9月に入り明日から2学期が始まります。これに合わせて毎年インフルエンザによる学級閉鎖が全国で散発的に報告されるようになります。夏休みが終わり集団生活が再開されたことで、一部の感染が全体に広がることが原因と考えられています。そろそろ今冬のインフルエンザ対策を考えていかなければならない時期になりました。

 今シーズンの流行状況はどうなるのでしょうか? それには南半球でのインフルエンザ流行状況が参考になります。南半球と北半球のインフルエンザ流行状況は関連性があると言われています。実際、2017年度オーストラリアでA,B型が混在して大流行しましたが、そのシーズンは日本でも同様の大流行が起こりました。2018年度オーストラリアではインフルエンザ発生件数は例年より少なめで、A型を中心とした流行でしたが、日本でも同様な流行状況となりました。

 

 シドニー モーニング ヘラルド紙(2019年7月1日号)によると、「今年度のオーストラリアでのインフルエンザ流行は例年より早く始まり、異常な高率(abnormal high numbers)で起こっている」「NSW州では現時点で3.2万人がインフルエンザ陽性と診断されており、この数は昨年度の全シーズンを通してのインフルエンザ陽性者の数の2倍にすでに達している」

 

 今シーズンの日本でのインフルエンザはオーストラリアと同様に例年より早く、流行期に入り、感染者数も多くなる可能性が高いと考えています。

 

腹部膨満その5

  • 2019.08.30 Friday
  • 06:51

「腹部膨満その4」からの続きです。

 治療効果不明(2回目の受診が無い方)あるいは無効であった方の割合をガスの貯留部位別にまとめてみました。

 

胃のみ:不明+無効=7名(41%、7/17)、   有効59%

大腸のみ:不明+無効=21名(62%、13/21)、 有効38%

胃と大腸:不明+無効6名(21%、6/28)、  有効79%

 

 胃のみにガスが貯留している方にはガスコン(胃のガスを吸着する)とガスモチン(胃の蠕動を亢進させ胃のガスを腸に送り出す)が効果的でした。胃と大腸にガスが貯留している方では治療効果は高く、大建中湯、ガスコン、ガスモチンが効果的でした。

 大腸のみにガスが貯留している方は意外と治療が困難でした。何らかの対策を検討しなければなりません。

 

 小腸にガスが貯留している場合は要注意です。腸閉塞や腹膜炎(癌性、炎症性)の方が含まれています。入院や手術になることもあり慎重な対応が必要となります。腸閉塞の前段階(サブイレウス)には大建中湯が効果的でした。それ以外にも小腸にガスが貯留しやすい病態としてはSIBO(小腸内細菌増殖症)やIBS(過敏性腸症候群)などがあり治療困難なことが多いです。内服薬以外にも食事療法、生活習慣の改善など総合的な対策が必要となります。

 

腹部膨満その4

  • 2019.07.30 Tuesday
  • 16:56

腹部膨満を主訴に当院を受診された方のうち、腹部レントゲン検査を実施した119名の方についての結果と考察をご紹介します。

過剰なガスが貯留している部位についてまとめました。

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胃のみ17名(14.3%)

小腸のみ5名(4.2%)

ぢ臘欧里滷横洩勝複隠掘ィ供鵝

グ澆半腸3名(2.5%)

Π澆搬臘横横弧勝複横魁ィ機鵝

Ь腸と大腸6名(5.0%)

┛澆半腸と大腸4名(3.4%)

 腹部膨満を自覚しているにもかかわらず、レントゲンでは腸内に過剰なガスが存在していない方が約30%おられました。

必ずしも「腹部膨満=腸内の過剰なガス」というわけではありませんでした。

 通常量の腸内ガスでも、腸粘膜の感覚が過敏になっている場合にこのような症状を呈すると考えられています。ストレスがその背景にあることが多いと言われています。

 このような方では治療薬の選択は実際の訴えや症状に基づいて行いますが、判断に苦慮することが多いです。

治療効果不明(2回目の受診が無い方)あるいは無効であった方が21名(60%)おられました。思うような結果が出ていないことを反映していると思います。少しでも精度を上げるための対策が必要と考えています。

 

次回は実際に過剰なガスが貯留している方の分析結果をご報告いたします。

風しんの追加対策事業(抗体検査、予防接種)

  • 2019.07.13 Saturday
  • 17:39

 令和元年5月から風しん追加対策事業が始まりました。風しん抗体保有率が低い世代(昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生の男性)の方を対象に抗体検査を無料で実施し、抗体が不十分であれば無料でワクチン接種を受けることができる制度です。

 

 当院ではこれまで23名の方が検査を受けられました。抗体が不十分(抗体価が8以下)であった方は10名(43%)でした。すべての方が麻疹風疹ワクチンを希望され、接種を受けられています。抗体価が低い方の割合が予想以上に高いことに驚かされました。

 

 風しん感染者数が増加している現状では、私を含めたこの世代の男性が積極的に対策事業に参加することが感染拡大を防ぐ上で重要だと考えます。お手元にクーポンが届いたら是非検査を受けて頂くようお願いいたします。

ちなみに私の風しん抗体価は32倍(HI法)ありました。

インフルエンザが少し流行っています

  • 2019.07.05 Friday
  • 21:18

 5月の連休以降当院でインフルエンザと診断を受けられた方は20名おられます(A型9名、B型11名)。例年に比べはるかに多くなっております。7月に入ってからでもすでに4名の方をインフルエンザと診断しました。また一部の幼稚園、小学校では小規模ながら集団発生が起こっていると耳にします。

 温暖化の影響でいよいよ本州でもインフルエンザが夏にも流行するようになってきたのか(沖縄以南ではインフルエンザは夏にも流行しています)、あるいは超大型連休のため人の動きが例年以上に活発になったことが感染の拡散の原因になったのか、などいろいろ考えられます。

 この時期は昨冬に接種したワクチンの効果は無くなっており、感染に対して無防備な状態にあるため要注意です。特に周囲にインフルエンザにかかった方がおられる場合には、微熱でもインフルエンザ検査を受けられたほうがよいと考えます(全く平熱でも検査で陽性となる方もおられました。silent spreaderとなる可能性があります*)。 当院でも急遽インフルエンザ検査キットを多めに発注しました。ご参考になれば幸いです。

 

*感染していても症状が軽く自覚症状がない状態。知らないうちに周囲に感染を広げている。(spreader:拡散者)